松崎の中瀬邸駐車場に面した鰻の「
三好」。蒲焼きの味は、ほとんど焼き加減で決まるのだが、ここの亭主の焼き方はとても上手なのでおいしい。また飯はむかし漁師が船の上で使っていた「
蒸し竈」で炊くという。こういうものが明治の初期にあったら、
咸臨丸の一行も木造船の甲板で毎日飯を炊いて米国人大尉をはらはらさせなくてもすんだかも知れない。
19世紀の帆船ではいったん戦闘状態とか荒天となると船内で火を使うことは一切禁止された。乗組員はその間何週間でも毎日ビスケットを食う。一方、帝国陸海軍では兵隊に毎日米飯を食わせないと戦が出来ないということが大きなハンディとなった。この「蒸し竈」を使っていた時代の船内食とはどんなものだったのか、興味深いところ。
しかし、欧米の木造船でも、甲板で火を使うこともなかったわけではない。捕鯨船だ。クジラの脂身を煮て油を抽出するため甲板に特殊な竈が設置されていた。竈の下の水を入れた隔壁を作り甲板を保護する仕組み(
写真)。これならひっくり返る心配もない。必要は発明の母。人間はいろいろ工夫するのだ。
蛇足:三好の鰻重のお値段は、東京の感覚では、かなりお高い。でも今日は平日なのに、二階までほとんど満席。多くは地元の家族連れ。ニッポンの「イナカ経済パワー」、畏るべし。